離婚協議書

離婚協議書

離婚協議書

離婚協議書とは、夫婦が協議離婚する際に、離婚の条件や取り決めについて合意した内容を書面化した契約書です。協議離婚の際に夫婦間で話し合って決めた様々な条件(親権、養育費、財産分与、慰謝料など)を明確に記録することで、将来的なトラブルを防ぐために作成されます。

 

離婚届を提出するだけでは、離婚後の取り決めについては何も証明できません。そのため、離婚後のトラブルを防止するためにも、離婚協議書の作成は非常に重要です。

 

□ 法的効力と位置づけ

 

離婚協議書は、夫婦双方が署名・捺印したものであれば、一般的な契約書と同様の法的効力を持ちます。つまり、夫婦は離婚協議書に記載された内容を守る法的義務を負うことになります。ただし、離婚協議書だけでは、相手が約束を守らない場合に強制的に履行させることが難しい面があります。

 

手書きでも夫婦の署名・捺印があれば効力を持ちますが、作成時には鉛筆や消えるボールペンは避け、消せないペンで作成することが重要です。

 

◇離婚協議書に記載すべき主な項目

 

1. 離婚の合意
離婚することへの合意と、離婚届の提出時期や提出者について明記します。

 

2. 親権者の決定
未成年の子どもがいる場合、親権者を誰にするかを明確に記載します。

 

3. 養育費について
子どもの養育費の金額、支払い方法、支払い期間、支払い日などを詳細に取り決めます。子どもの進学や特別な費用負担についても記載しておくと良いでしょう。

 

4. 面会交流(面接交渉)
非監護親が子どもと会う頻度、方法、場所などを具体的に記載します。

 

5. 財産分与
夫婦で築いた財産をどのように分けるかを明確にします。不動産、預貯金、自動車、株式、債務(ローンなど)の分担についても記載します。

 

6. 慰謝料
不貞行為や暴力など、離婚の原因となった行為に対する慰謝料の有無、金額、支払い方法を記載します。

 

7. 年金分割
婚姻期間中の厚生年金の分割について合意がある場合はその内容を記載します。

 

8. その他の条項
住所や電話番号が変更された場合の連絡方法、秘密保持条項、清算条項(これ以外に請求しないことの確認)などを必要に応じて記載します。

 

□ 公正証書による離婚協議書の強化

 

離婚協議書をより効力のあるものにするためには、公正証書として作成することが推奨されます。公正証書とは、公証人が作成する公文書で、以下のようなメリットがあります:

 

公正証書のメリット
1. **強制執行認諾文言を入れられる**:養育費や慰謝料の支払いが滞った場合、裁判所を通さずに財産の差し押さえなどの強制執行が可能になります。
2. **証拠力が高い**:公証人が関与して作成された書面なので、裁判などでの証拠価値が高くなります。
3. **原本が公証役場に保管される**:紛失や改ざんのリスクが軽減されます。
4. **心理的抑止力**:相手に支払い義務などを守らせる心理的プレッシャーになります。

 

□ 離婚協議書作成の流れ

 

1. **協議内容の決定**:夫婦で話し合い、離婚条件について合意します。
2. **離婚協議書の作成**:合意内容を書面にまとめます(行政書士のサポートを受けることも推奨)。
3. **署名・捺印**:夫婦双方が署名・捺印します。
4. **公正証書化(任意)**:より効力を強めたい場合は、公証役場で公正証書として作成します。
5. **離婚届の提出**:離婚協議書の内容に基づいて離婚届を提出します。

 

■まとめ

 

離婚協議書は、離婚後のトラブルを未然に防ぐための重要な書面です。特に子どもがいる場合や財産分与、養育費など金銭的な取り決めがある場合には、詳細かつ明確に条件を記載することが大切です。

 

単なる私文書としての離婚協議書でも法的効力はありますが、より確実に権利を保護したい場合は、公正証書として作成することを検討すべきでしょう。特に養育費の支払いが長期にわたる場合や、大きな金額の慰謝料・財産分与がある場合には、公正証書化することで将来的なトラブルリスクを軽減できます。

 

どのような形で離婚協議書を作成するにせよ、内容が複雑な場合や大きな金額が絡む場合は、当事務所などの専門家に相談することで、より安全かつ明確な取り決めが可能になります。